デザイナーのグエナエル・ニコラさんをお迎えしての『WHO’S AT THE BAR』、3度目のご来店です。話もだんだん佳境に入り、ニコラさんのデザインに対する核心的な部分へと迫っていきます。

−−ニコラさんは東京在住ですが、来日したときの目的ななんだったのでしょうか。
ニコラ:1991年に住み始めたんですが、東京という街にずっと興味があったんです。なんだか元気で、欧米とはまったく違う文化を持っていて、それに触れたかったですね。
−−それから約20年ですが、いまは変わりましたか?
ニコラ:むしろ変わっていないことに問題があるかもしれません。たとえばいまでも建物やインテリアデザインの世界で「なになに風」「どこどこ風」という言葉が幅をきかせているでしょう。それはもうやめようよ、と言いたくなる。東京ならではのクオリティのようなものを出せるはずなんです。
一時期は「エディティング」、つまり編集の時代と言われて、さまざまな要素のコラージュなどがおもしろいとされたこともありましたが、本質を作らないと編集も出来ない、ということに気づくべきです。
イメージだけでなく、エクスペリエンスの要素をしっかりデザインに盛り込むことから本質が出てくるように思っています。

−−エクスペリエンスとは体験型デザインを重視するということですか。
ニコラ:たとえばカクテル。今回飲ませてもらった「ローズ・サファイア」を観ても、ボンベイ・サファイアが中に入っているなんて想像もつかないでしょう。なんだか知らないけれどおいしいと思う。そこがいいんです。僕は香水も好きなのですが、そのよさは調合のおもしろさにあるわけです。どうしたらこんないい香りが作れるんだろうって。
過去の記憶をひっぱってきても分析不可能なものを提案することがデザイナーの仕事だと思っているせいかもしれません。体験を通して想像力がふくらんでいく。
そこから受け手の中にいままでなかった気持ちが醸成されていく。それを意識しています。
−−ニコラさんの手がける空間とも通じるものがあるように思えます。
ニコラ:いまホテルもリサーチしているのですが、やはり同じようなことをベースに考えます。僕が思ういいホテルは、部屋の快適性もさることながら、インサイドライフというのかな、ホテルの建物の中にいるだけで多くの体験ができるところ。
たとえばニューヨーク・マンハッタンのコロンバスサークル近くにある「ハドソン」というホテルは、部屋は狭いですが、バーを兼ねたパブリックスペースがとても広くて、週末はここにマンハッタンのひとが集まります。自分から街に出なくてもニューヨークのいい部分が、ホテルに来てくれる。ひとをうまく集めることでホテルのクオリティが上がっている。
つまりは、その建物とひとが交わりオリジナルの空間が生まれる。そこに新しい体験があり、刺激がある。だからまたその場所にひとが集まる。そういう相乗効果みたなものを演出できるデザインや空間を手掛けたいですね。
いかがでしたでしょうか。ニコラさん独自のデザインに対する哲学のお話。次回はいよいよ最終回。ニコラさんにとってデザイナーとはどうあるべきか、大胆にお伺いします。お楽しみに。
取材場所:Two Rooms Grills/Bar