デザイナーのグエナエル・ニコラさんをお迎えしての『WHO’S AT THE BAR』。前回のお話は、空間デザインから主にバーのデザインの面白さについて語っていただきました。今回は、バーのデザインからグラスの話へと。そこから垣間見えるニコラさんならではのデザイナーとしての視点をお伺いしていきます。

−−商業施設の内装を世界各国で手がけていらっしゃるニコラさんは、グラスの存在感の大きさに注目しているんですよね。
ニコラ:今回はバーで話をしているので、飲食店のことを話しましょう。レストランとかバーのことを考えるのは、デザイナーとしてもとても好きですね。
たとえばいま話に出たグラス。
レストランもバーも店のシグネチャー、つまりその店を象徴するのは水を飲むときのグラスそのものではないかと思います。
レストランだったら食中酒より前に水を飲むことも多いし。個人的には透明度が高くて、かつ重いグラスがいいと思っています。
かつ、男女でグラスを変えたらプレゼンテーションとしてとてもおもしろい。女性には少し軽めのグラスにするとか。

−−水のグラスも広義でとらえればその店のデザインの一部であるという考え方ですか。デザイナーの発想はとても興味ぶかいですね。
ニコラ:デザイナーの仕事は、1プラス1を2ではなく3にすることだと思っています。見た目以上のものを与えたいと思ってデザインします。
オーストリアのクリスタルの会社スワロフスキーに依頼されて、ミラノサローネ2010で開催された「クリスタル・パレス」での展示作品をデザインしました。
クリスタルとグラス、なんとなく関係があるかな。
僕の作品タイトルは「No Gravity Space」、クリスタルを宙に浮かせています。
『No Gravity Space』photo by Nacasa & Partners

−−どういうことだろう?と想像力をかきたてられますね。
ニコラ:浮かぶはずのないものが浮かんでいる。観るひとに「え?」と思ってもらいたかったんです。最初にプレゼンをしたとき、スワロフスキーのひとたちからも「クリスタルって透明に見えるけれど重いんですよ」と注意されました(笑)。この仕事が僕にとっておもしろかったのは、スワロフスキーの職人たちと一緒に働けたことです。どの業界でも職人のもつ知見は刺激になります。
−−バーでも座ったら「こういう酒を飲みたいでしょう?」と気分にぴったりのカクテルを出してもらえると最高、と以前ニコラさんが言っていたけれど、それもプロフェッショナルの知見でしょうか?
ニコラ:そうそう、それが大事。モーリス・ラクロワの腕時計「ポントス」をリデザインしたときも、最初僕が考えていたことを先方の職人に話すと、「それでは腕時計ではなくなる」と言われたり、どんな要素で腕時計のデザインは成立しているのかがよく分かりました。これは……ノー、こうすると……イエス、では今度はこしたら……ノー、といった繰り返し。その分野のプロフェッショナルとつきあうことでデザインの視野が広がります。そこにも1プラス1が3になる可能性が秘められていると思います。
いかがでしたでしょうか。次回はデザインに対する考え方についてさらに深く、お伺いしていきます。
お楽しみに。
取材場所:Two Rooms Grills/Bar