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ヴァイオリニスト 五嶋龍さん vol.3
「空手」と「物理」と「ヴァイオリン」

September 7, 2009

ヴァイオリニストの五嶋龍さん、今回が三度目のご来店となります。ヴァイオリニストとしても、また大学生としての毎日も存分に楽しまれている五嶋さんですが、もうひとつ、人生において欠かせないものがあるのだそうです。それは「空手」。今回は空手のお話をメインに、大学で学んでいる物理学、そしてヴァイオリンの不思議な関係性を語っていただきます。

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−−五嶋さんのような超一流の演奏家が、空手家としても有段者であるというのは、やっぱりなかなか周囲の理解を得られないのではないですか?負傷の心配なんかもあるでしょうし・・・。
五嶋:もうその点については、理解が無いとか理解を得るとかそれ以前ですね(笑)。周囲はみんな、「信じられない、おかしいんじゃないか」みたいなリアクションです(笑)。だからもう勝手に、わがままにやらせてもらってます。

−−五嶋さんをヴァイオリニストとしてお育てになられたお母様は、空手についてはどうお考えなのでしょうか?
五嶋:空手はそもそも母の勧めで始めました。祖父がもともと、空手の師範だったということもあったし。ちょうどその頃、僕は学校でいじめにあっていたりしたんで、そういうことで自信を失わないようにということもあったようです。

−−日本を離れた場所で、空手を通じてお祖父様や自分のルーツを見つめる機会にもなりますよね。
五嶋:ええ、そうです。祖父に対する尊敬の念や、そういった縁、続けていくべきもの、最初からやると決まっていたものとして、「空手」は母や僕の中に既にあったという感じですね。

−−ヴァイオリンを演奏することに関して、空手の存在はやはり大きいでしょうか?
五嶋:それは物凄くあります。やっぱりヴァイオリンに向き合う時の集中力や、精神的な強さを培ってくれたのは空手だと思うし。空手が僕の身体の中心に、精神の芯を一本作ってくれたというような感覚がありますね。

−−というと、空手というのは五嶋さんにとって、フィジカルな面を鍛えるというよりは、精神面でより深く支えになっているということなんでしょうか?
五嶋:そうですね。ちょっと哲学的で、不思議なパラドックスですけど。空手っていうのは闘いながら守るというか、「闘うための技を極めることによって、闘わずにいく道を探す」といったようなところがあるんです。相手を倒すための技ではあるけれども、極めた先にあるのは相手も自分も守ることなんです。肉体を究極まで鍛錬して研ぎ澄ますことで、実際に成長して鍛えられていくのは精神のほうなんですよね。

−−現在、ハーバード大学では物理学を専攻なさっているということですが、こちらのほうも選んだ理由に空手が大きく関わってらっしゃるとか。
五嶋:そうなんです。理系に行きたいというのが元々あったのですが、科学とか生物は、自分的にピンとくるものがなくて、結果的に物理を選びました。でも、物理を始めて一瞬でわかったんです。今まで空手の先生にただ言われてその通りやってたことが、すべて力学的に説明ができるんだ!ってことに。動きの全てに理由があって、きちんとした裏付けに基づいていたんだってことを知ったんです、物理のおかげで。

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−−今まで「哲学的」ととらえていた、ある種の精神論みたいなものが、学術的にもきちんと論証もできるものだったという。それは何かを理解する上で、とても素晴らしい、希有なことですよね。
五嶋:物理はヴァイオリンや空手に比べたら本当に趣味程度のもので、とても大っぴらに言えるレベルにはないですけど(笑)、それでも物理との出会いは自分の中で大きかったですね。ただ言われてやってるだけと、その理由がわかってやるのとでは達成感も違うし。

−−そうやってフィジカルについてもメンタルについても、多角的な視点での深い思索が、五嶋さんのヴァイオリンにも反映されているというわけなんですね。
五嶋:ええ、空手と物理とヴァイオリン、この三つの良いバランスが自分にとっては物凄く重要なのは確かです。何事もバランスが良く均衡してると、そのものの強度はより高まっていくものだし、日常生活の中でそういうバランスを与えてもらったこと、それが保てる環境に深く感謝しています。


21歳らしい素顔と、達観ともいえる落ち着きを、同時にナチュラルに体現していらっしゃる五嶋さん。その根底には、お祖父様から受け継いだ空手の教えと、物理学が深く関わっているというお話、実に興味深いです。次回はいよいよ最終回、そんな五嶋龍さんの目に映る、今現在の自分自身について、お話を伺います!お楽しみに!


取材場所:マンダリン オリエンタル 東京「マンダリンバー」

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