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WHO'S AT THE BAR

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ミュージシャン 菊地成孔さん vol.4
ジャズとバー、“大人文化”の未来

July 27, 2009

ミュージシャン・菊地成孔さんをお迎えしての「WHO’S AT THE BAR」、四回目となる今回が最後となります。前回のお話で、ふと浮き彫りになった「ジャズとバーの共通点」。両者が今の若い世代に敬遠されがちなのはなぜなのか?菊地さんの鋭い考察を伺います。

−−前回、「ジャズとバーが若い世代に敬遠されてしまうのは“大人の文化”だから」というお話が出ましたが。そのあたりをもっと詳しくお聞きしたいのですが。
菊地:フォーマルな場所に若い人があまり行かなくなったっていうのは、傾向としてはっきりあると思うんですよ。みんな、安くて気軽で、店員さんが優しく何から何まで親切にしてくれるような場所がいいっていう。今流行っているお店や場所って、概ね子どもっぽいものばかりだと思うんですね。たとえばカフェなんかその最たるもので。カフェにあるものって、かわいくて柔らかくて甘いものばかりでしょ?まるで託児所ですよね(笑)。

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−−以前だったら、自然と年齢に合わせて嗜好や、行く場所を変えていくということがあったりしたけれど、今はそういうこともあまり考えなくていい。
菊地:そうですね。みんな変わりたくないし、子どものままでいたい。アンチエイジングな思想が物凄く強くなってる。昔ならね、いい歳した大人が子どものままでいたいなんて言えば、カマトトとそしられたものだけど(笑)、今は誰からもそんなこと言われませんからね。わざわざ、よくわからない新しい場所へ行って不安な思いをしなくても、安心できる慣れた場所にいつまでもいていいわけだから。

−−でも、たとえばクラシック音楽なんかはどうでしょう?クラシックも、敷居の高さや、ある程度の素養や知識を要求されるイメージがあるかと思うんですが、若い世代にもブームが高まっていたりしますよね。
菊地:それは、漫画のおかですよ(笑)。『のだめカンタービレ』の大ヒットがあって、クラシックは上手いことやったなって(笑)。まあそれは冗談にしても、日本人はとくに、漫画やゲーム、アニメやなんかに一度変換されるとね、すごく親近感をおぼえる。わかった気になるんですね。酒でいえば、ワインもそうですよね。『神の雫』とか、ああいう漫画が、簡単にそのものをわかった気にさせてくれる。まさに「漫画でわかる○○」的な感じで。

−−では、ジャズやバーも、漫画やゲームになったら人気が復活する、と(笑)。
菊地:そうそう(笑)。一回、全部漫画やゲームに取り込まれてみるといいのかもしれない。手っ取り早く、廃れていくのを回避できるんじゃないかな。ああ、「おたくバー」なんてあったらきっと一発ですよ。まあ、子どもは酒は飲まないものだけど(笑)。

−−子どもはお酒を飲まない・・・。そう言われてみれば、おたく文化の象徴ともいえる「メイドカフェ」もあくまで「カフェ」なんですね。バーではなく。
菊地:でしょう。でもジャズもバーも、そもそも最初から少数派に支持されて続いてきた文化だから、世間の大部分を巻きこむような流行にはならない気はしますよね。会員制のバーとかがあるくらいで、誰彼みんなが行くところ、行けるところじゃないからこその良さというものが、やっぱりあったわけで。ジャズも同じですよね。クラシックがあって、そのカウンターとして、音楽の持つ自由さとかグルーヴ、即興性みたいなものが大きな特徴になってる。

−−だとすると、大多数に受け入れられようとすれば、ジャズもバーも、その本来の存在理由を捨てなきゃならないということに・・・。
菊地:流行しているものを右派とすると、そういったもののアンチ、左派としてジャズやバーがあって。今後、ジャズやバーがどっちの方向へ行けばいいかといえば右派にすり寄って迎合するのも、孤高に左派を貫き通すのも、・・・どちらも辛いところですよね(笑)。

−−八方塞がりな感じがします(笑)。何か打開策というものはないんでしょうか。
菊地:うーん、このまま世の中が何も変わらずにいくのなら、大人の文化ってものは何一つ無くなって、ジャズもバーも間違いなく絶滅するでしょうね。もちろん、僕もジャズの置かれたこういう状況を、何とかしたいという気持ちはありますけども。

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−−菊地さんは、ジャズ以外の音楽も意欲的に取り組まれていらっしゃるし、それをジャズに持ち込んでもいて、そのあたり、今までジャズを聞かなかった若い層にも幅広く支持されていらっしゃいますよね。
菊地:そうですね、CD売上げも興行収入も、こうした即興音楽の中ではあるほうだと思います。僕のやっている音楽は、比較的ポップな側面もあって、若々しいイメージ・・・いわゆる“大人のジャズ”ではないのかもしれないですよね。そのぶん、敷居の高さやとっつきにくさは若干薄れているところはあるでしょうね。

−−そういった菊地さんのフレキシブルな音楽表現は、ジャズという音楽の、懐の深さを知る、というところに繋がっていってるわけですよね。
菊地:そう感じてもらえてるなら良いなと思いますけど(笑)。まあ、なんでも、よくわからないまま遠目で見ているだけだと、何か難しいものに思えるものですよね。ジャズもしかり、バーもしかり。そんなに意を決して立ち向かわなきゃならないものではないはずなんですけど。

−−何かしらの、知るきっかけがありさえすればいい、と。
菊地:逆に言えば、そういった“きっかけ”が無いと絶対にダメってことですね(笑)。ちょっとくらい関心を持てたとしてもね、経験したことのない人に、いくら何言っても、絶対にこっちには来やしませんよ。その一歩を踏み出させる“きっかけ”を作るというのが、今の世の中では何より大変な気がする。でもやっぱり、僕が思うに、バーよりもジャズのほうが、立場は深刻な気がするなあ(笑)。何とかしたいです、本当に!


ミュージシャン菊地成孔さんをお迎えしての『WHO’S AT THE BAR』いかがでしたでしょうか。世の中の動きを鋭く見つめ、時に憂いながらも、どこかそれすらも好奇心旺盛に楽しんでいるふうでもある菊地さん。これからの活躍にもいっそう注目したいですね。

取材場所:「recoa」


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