WHO'S AT THE BAR

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サックスプレイヤー 谷中敦さん vol.4
まずは楽しむこと。これまでも、そしてこれからも

May 28, 2009

20年という節目を迎えた音楽活動から、バーにまつわるお話だけでなく、書き下ろしの詩まで提供していただいた東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦さん。最終回となりましたが、話はまだまだ尽きません。

−−前回はバーでの谷中さん的楽しみ方について、いろいろとお話しを伺いました。友人との会話、そして友人達の出会いを繋ぐということがバーでの楽しみとなっているようですね。ところで谷中さんにとって好きなバー、居心地の良いバーに共通点ってありますか?
谷中:くつろぎと盛り上がり、ある意味両極にある事柄をどちらも実現させてくれるバーが好きですね。

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−−日によってもそうですが、そのバーにいる時間の経過、例えば飲んでいるお酒とかかかっている音楽によって和みたかったり、高揚感を求めたりすると変化があると思います。だからこの両方を受け止めてくれる懐の広さは嬉しいですよね。
谷中:またくつろぎと盛り上がりというのは、今回のスカパラのアルバムにも共通していることなんですよ。大音量で聴いて盛り上がるのも良し、ひとりでじっくり聴いてみるのも良い、そんなアルバムに仕上がっています。それは作り手である僕も嬉しかった。

−−そういえば、このアルバムのタイトルが冠になったツアーが行われましたよね。
谷中:“PARADISE BLUE TOUR ”では、全国のライブハウスを回りました。一番小さいところで収容人数200人という本当に小さなライブハウスです。もうお客さん全員の顔が見えますよ。

−−そんな少人数で、スカパラのライブだなんてものすごく贅沢ですね。ライブハウスでのパフォーマンスは観客と至近距離で行われますから、盛り上がり方やテンションもホールとはまた別のものになるように思います。
谷中:すごく近くで向き合っていると、お客さんと会話をしているような感覚になってきたりしますね。まるで会話のようにコミュニケーションをとっていくことで、お互いどんどん盛り上がって、良い感じになっていく。インスピレーションとハプニングが満載。そんなライブでの化学変化で、スカパラの音楽がさらに進化して行けたら‥‥。いつでもそう思っています。

−−前にも話しましたが、やっぱりスカパラはライブ、良いですよねぇ。きっと今回もさまざまな化学変化で、ツアー最初と最後では同じ曲でも違うパフォーマンスというか、違うスカパラを見ることが出来るのではないでしょうか? 谷中さんにとって、ライブの一番の醍醐味って何ですか?
谷中:僕たちにとってインプットとアウトプットがちゃんとあるというのはすごく大事だと思っています。アルバムを作り、ライブをやると循環しているって実感出来るんです。こうやって積み上げたものをため込まず、アウトプットすることで健康でいられるんじゃないかな。例えばひとりでたくさん本を読んでいると、その知識は自分の中にどんどんどんどんたまっていくけれど、それを人に話すことで知識がより洗練され、新たな何かをインプットできたり。ため込まないのが健康的かなと。

−−ライブの後は、メンバーやスタッフ達と打ち上げをしたりすると思います。反省会のようなものはするんですか?
谷中:今はしなくなりました。あきらかなミスをしたメンバーはいつの間にか自己申告するようになっているし。反省会のようなことをしていた時期も以前はありました。でも今は失敗を楽しめたり、失敗からも何かを学べたり面白いな、と思えるような所があるんだと気がついたように思います。

−−それも20年のキャリアがなせる技かも知れませんね。この20年という時間をしみじみ実感すること、最近あったりしましたか?
谷中:昔は「彼女がファンなんです」と言われていたのが、「奥さんがファン」になり最近では「娘が~」と言われるようになったりとか(笑)。でもそれって本当に嬉しいことですね。一緒にエイジングしていけるって。

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−−一緒にエイジングしている人、スカパラのファンには多そう。それは違和感あるような方向転換やがっかりするようなことをしてこなかったからではないでしょうか。楽しみながらも音楽に真面目。そんなファンを裏切らない姿勢の結果なのでは?
谷中:ずっと飽きさせないように本質のようなところは変わらず、でもディテールを工夫してきたというのが、もしかしたら長続きの秘訣かもしれない。

−−ひとことで言うと結構簡単に聞こえますけど、難しいですよね。飽きさせないって。飽きさせないために心がける秘訣ってみんなが知りたい事柄のように思います。
谷中:やっぱりこちら側が楽しんでやっていくことですかね。僕らの仕事は何ら特別でも特殊でもなく、多くのみなさんと一緒だと思うんですよ。ルーティーンワークに新鮮味を感じなくなってしまったりする危険は自分たちにもいつでもあります。例えばツアーも毎回同じようにライブをやっていたら飽きてしまうし。やっぱりそこは同じでありながらも少しの違いや、自分たちの受け止め方なのでの変化を楽しむことが大切になってきますよね。ニューアルバムに入っている“ROUTINE MELODIES”という曲にもそんな思いが込められています。

−−バンドとしてだけでなく、大人の仕事人としてのポジティブを感じますが、そういう姿勢ってずっと前から変わっていませんか?
谷中:前向きなところは変わっていないんじゃないかな。言い方を変えると、自分たちは楽しいってことをずっと開発してきたような気がします。いろいろな逆境を乗り越えていく中で、それを面白いと思えるかどうかということを常に考えてきたというか。「このピンチをネタに2年間は飲めるぞ」と思ったり(笑)。状況って何らかの形に変化していきます、必ず。どんな逆境でもずっと続かないわけです。だとしたら後々これをどう面白く人に伝えていこうか、ということを考えるように自分をシフトさせていくんです。そうやっていけば万事、災い転じて福となるでしょう?

−−つい、愚痴ってしまいたくなるような理不尽なことや、挫けたくなるほどの苦境もいずれはバーのネタになると!でも考えてみれば愚痴って品が良くないというか、どちらかというと下品です。高貴な人の愚痴って聞いたことないし(笑)。スカパラのファンはそんな品の良さもきちんと感じているのかも知れません。だから良い客たちがついているのかも。
さて、最後に今後の抱負を聞かせてください。20年という節目を迎え今、スカパラとしてやってみたいと思っていることってありますか?

谷中:(ライブで)行ったことない所に行くことと、行った所にまた行くこと。海外のライブでも。ヨーロッパのお客さんは、自由に音楽を楽しんでいるのが本当に良く伝わってきます。極端な話、ステージが見えなくてもOKという感じ。エンタテインメントとしてのライブじゃなくて、音楽そのものを楽しんでもらえていると何だか曲が浮かばれているな、と思ったりしますし新たな発見も多いです。ヨーロッパのライブ会場だと、また行けるかどうか確かではないこともあります。でも戻ってくると約束したら、絶対にまたそこでライブをしたいですね。

 熱くバンドや音楽やライブの話をしてくれた谷中敦さん。インタビューが終わって撤収しようとしたグラスを「ちょっと待って、飲みますから」と、サーブされたカクテルをおいしそうに飲み干しました。作ってくれた人のことを思いやり、出されたものはちゃんと残さない。そんな礼儀正しさと音楽に対する情熱が一体となっている所も、谷中さんそしてスカパラの魅力なのかも知れません。

取材場所:「BUZZ OFF」


text by: TANAKA Toshie


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