3回目の登場となる、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦さん。前回約束をした“バーを題材にした詩”も、ちゃんと書き下ろしてくれました。まずは、その作品から。
「I was at the bar.」
知らずにもってしまった力と舐めた酒なんか解らないけど
畏れられるようになってしまった
褒められようと思っていたのに褒められる前に畏れられるようになった
本当は丁寧に本能的な優しさを持てたらそれぞれの過去の話なんか聴かずに
誰かにも未来にも惑わされずにただ一人自立して孤立せず
格好良くなれる筈の不思議は照れて見つめられていることに気づかなかっただけだ
注目を浴びる人のオーラはフェロモンではない
服や香水ではなく目つきや口ぶりに現れる美しさを研いて
鏡にうつった自分は信じないし写真うつりは気にしない
目標は知らない異性から自分に届かない称賛を求めることだ
知らずにもってしまった力は人のために使うと美しいと親友が言い
本能的な愛がお酒を通じて現れたらピュアだと独りものの女は待つ
そんな奇跡を信じてまたバーに戻る人々に
ボトルは思い出をこぼさずに待つし綺麗なフォルムで閉店後のバーを飾る
歴史をちいさな文字に託して美しいことこの上ない

--バーを題材にした力作、ありがとうございました。自立して孤立せず、など人が正しいというか、美しいと思える姿勢とバーで毎夜繰り広げられている本当にたくさんのコミュニケーションや出来事が重なっているように感じました。自立して孤立せずにバーに居ることが出来る人が、バーにはふさわしいですよね。改めてお訊きしますが、谷中さんにとってはどんな場所ですか?バーって。
谷中:自分にとっては友達と語り合う場所。詩は人との出会いの数だけ書けると思っているので、バーから生まれた詩もたくさんありますよ。
--前回は酔っぱらっていても正確な漢字変換をして書いているって言ってましたよね。
谷中:携帯電話にメールという機能があると知ってから、これに詩を書いて友人に送ったりするようになりましたが、たとえ酔っぱらっていても、記憶がなくても正確ですよ、案外。そこはもう、鍛えられていますから。
--そういう風にして出来上がった詩は、しらふの時と作風が違ったりするんですか?
谷中:無茶ですね、言葉の順番が。この行の次にこの行はあり得ないな、というような。酔っぱらっている時は、無意識のうちに自分の中から出てくる言葉を綴っているからだと思いますが。携帯電話に詩を書き込んでいるという作業は、自分にとってはメモみたいな感覚でもあるんです。
--谷中さんがバーで一番楽しいと思うことって何でしょう。
谷中:さっきも言ったけど、人と話している時じゃないですか、やっぱり。友達と一緒にいる時、そこにお酒があるというシチュエーションが好きなんですよ。だからひとりでバーに行って、静かにお酒を飲んでいるってことはありませんね。たとえそこにはひとりで来てもお店の人と話したり、他のお客さんにもつい話しかけたくなってしまう。そういう意味では、自分の中でお酒と人って一体化しているものです。
あとお酒の席で嬉しいのは、そこでたまたま会った友人を自分の連れだった人に紹介して、彼らがまた話をして意気投合していたりすること。自分を介し、お酒を介し、今まで知らなかった人たちがどんどんうち解けていくのを見るのは、すごく嬉しいです。人の繋がりが新しく生まれていくのをお酒を飲みながら見ているのが。
--友情が生まれる瞬間に立ち会うというような感じですね。
谷中:そうですね。お酒を飲んでいて何が楽しいってそれが一番楽しいかも知れない。
--このBUZZ OFFは、言うなれば谷中さんのホームなバーですよね。谷中:はい。
--アウェイのバーとホームでは自分の楽しみ方も変わってきたりしますか?
谷中:いや、アウェイもホームにしていきたいって思って飲んでいますね。だから縁あってその場にいる人といっぱい話したいといつも思っています。そして人ともバーとも仲良くなりたい。
--先ほど谷中さんは、バーとは人と話をする場所だと言っていました。ではいつもどんな話をします?
谷中:僕はいつも男ばっかりで飲んでいるんです。何故だか婦女子には説教をしちゃうんですよ、結構先輩の女性でも(笑)。男友達に対して、こんなことを言ったら絶対言い返されると分かっていながら、あえて投げかけたりします。そしてその後返ってくる言葉をどれだけ受け止められるか自分で自分を試してみたり。サドマゾで言ったらマゾっぽいところがあるのかも。
--男友達同士でたくさんの会話。これが谷中さんのバーでの定番みたいですね、メンバーのみなさんとプライベートで飲んだりすることもあるんですか?
谷中:飲みますよ。始めは一緒じゃなくても(メンバーを)呼び出したりします。
--そういう時はどんな話をするんでしょう。
谷中:メンバーだけというよりも、そこに友達がいたりする場合が多いんですよ。で、メンバー以外の人と話す時にお互い助けあっているというイメージが近いかな。
--助け合うって‥‥?
谷中:言い方を変えると、同席している人へ話を促す役まわりをメンバーと一緒にやっているんです。友達という名のゲストに。
--つまり、メンバー同士暗黙の了解でホスト役を買って出るわけですね。素晴らしいチームワーク。スカパラってお互いが依存しないで仲が良いイメージがあるんですけれど、バーでのシチュエーションにもその片鱗を垣間見た気がします。
谷中:ありがとう。でも、ホストでなくて聞き手と書いてもらって良いですか?(笑)
バーでも良いチームワークを見せる東京スカパラダイスオーケストラ。そして谷中さんにとって友達との会話とお酒は対になっているようです。