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サックスプレイヤー 谷中敦さん vol.1
デビュー20周年、そして新たなステージへ

April 8, 2009

今回のゲストは、東京スカパラダイスオーケストラ(以下スカパラ)のバリトンサックスプレイヤー、谷中敦さんです。2月には14枚目となるアルバム『PARADISE BLUE』が発売されました。今年でデビュー20周年というスカパラ。まずはニューアルバムに込められた思いから聞いてみると‥‥。

--新しいアルバム『PARADISE BLUE』のことから聞かせてください。アルバム作りを前に、メンバーにはどんな思いがあったんでしょうか。
谷中:今回がデビュー20周年14枚目のアルバムとなります。前作の『Perfect Future』は、良い意味でとても挑戦的なアルバムでした。そんなアルバムを発表した次に何を、と考えた時、また改めてシンプルなものを作っていきたいという思いが、確認するわけではなく自然とみんなの中にありました。

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--暗黙の了解のような。
谷中:そうですね。あとこれは(アルバムを)録り終えてから思ったことなんだけれども、今までいろいろな試みをやって来たおかげで、シンプルでありながらたくさんのことを感じさせられるアルバムに出来上がったと思います。デビューから20年経って、自分たちの今まで歩いてきた軌跡が確認出来るようなものになっているんじゃないかと。こういう風に思えるのは、きっと長く続けてきたからだと思いますね。それは本当に良かった。

--20年いろいろなことに挑戦し、再びシンプルな楽曲に立ち返った。それはスカパラの原点回帰でもあるし、また大人だからこそ極められるシンプルを表現した新たなステージのようにも思えます。
谷中:何回転かしていますから、実際。音楽以外のジャンルでも昔がえりみたいな事柄って良くありますよね。例えばファッションでも流行がまた巡ってきたりする。そんな感じに自分たちも、シンプルということで言うと、また同じ場所に戻ってきてはいるけれど、円をただひと周りしたわけではない。螺旋を描いているんだと思います。全く同じなわけではなく、ひとつ上のステージにいる感じ。またこれからもそんな風に広がっていけたら、と思っています。シンプルだけれど、前のシンプルとは全く違うものになっている。それは今回のアルバムを作って実感しましたね。

--タイトルの『PARADISE BLUE』はどうやってつけられたんですか?
谷中:これはベースの川上つよしがつけました。ブルーには憂鬱という意味があります。“パラダイスなのにブルーって何だか面白いね”というのが出発点。でもそれと同時に海や空のブルーは、まさにパラダイスを象徴するような色でもある。そうやっていろいろと捉えられるところも面白いな、と。

--ダブルイメージですね。
谷中:また自分たちがやっているスカっていう音楽も、開放的でダンサブルなのにどこかノスタルジックな部分もあり、初めて聴いた人でも何だか懐かしいと感じてしまうようなところがあります。『PARADICE BLUE』という言葉は、スカっていう音楽そのものを表してもいるんです。このタイトルをつけた後に、そんなことも改めて思ったりしました。

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New Album『PARADICE BLUE』

--先ほど20年間で何回転かしているとお話ししていましたが、谷中さんにとってこの20年はどんな日々でしたか? 
谷中:「あっという間でしたね。僕たちはずっと休むことなく活動してきて、ツアーも毎年かなりの数をこなしていますが、20年ずっと歩いてきた感想を一言にするなら、あっという間。活動していく中ではピンチもあったけれど、そんな状況さえも自分たちで楽しみに変えようとしてきました。まるで錬金術師のように(笑)。また最近はあっという間の日々ながら、あわただしく毎日に追われているというのではなく、ゆっくりと物事を考えられるようになってもきています。

--そこにも20年のキャリアというか重みを感じますね。
谷中:そうですね。余裕が少し生まれてきたのは、自分にとってプラスにもなっています。

--ツアーもあるんですよね。
谷中:全国まわりますよ。ライブハウスツアーです。

--ツアーが始まる前に、メンバー同士で“今回はこうしよう”というようなコンセンサスをとったりするんですか? もしくはライブで一番心を砕いていることってなんでしょう?
谷中:自分たちは基本的にダンスバンドだっていう気持ちをお互い持っていて、だからみんなを盛り上げたい、みんなで盛り上がりたいっていう思いは、メンバー全員が持っていると思う。実際メンバーはみんな良く見ていますよ、客席を。みんながライブでのお客さんの反応を本当に楽しんでいます。

--スカパラのライブってすごい盛り上がりますし、最高に楽しいですよね。今から6年ぐらい前だと思うんですが、スカパラのライブに行った時に、忘れられない出来事がありまして‥・。誰かが落とした財布を手に持ったお客さんが“これ誰のですか?”とか言ったんです。そうしたら谷中さんがMCで“財布落とした人いない?”ってみんなに聞いていました。すぐに“あ、私です”って名乗った人がいて、無事に持ち主の元にお客さんの手から手を伝って戻って行きました。その時、なんて良いお客さんたちなんだろうって思ったんですよ。そうしたら谷中さんも“無くした財布が戻るライブ、最高だよ!”って言って笑っていて。その後さらに盛り上がって。
谷中:あったね、そんなこと(笑)。覚えてる、覚えてる。

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--たくさん売れることよりも、良いお客さんをつけることの方が実は難しい気がするんです。そういう意味で言うと、スカパラって本当に良いお客さんがついていると思うんですよね。ライブで生の観客に会うと、つくづく思います。
谷中:僕らが良いお客さんをつけることができたのは、すごい誇らしいことだと思いますね。オープンにスカという音楽の良さを人に伝え続けてきたおかげとも言えるのかも知れない。

--受け手って送り手のずるさとか媚びとか意外と敏感に察するもののような気がします。そういう意味でいうと、スカパラには狡さがないから本物の、というか良いお客がつくのではないでしょうか。狡さや媚びがないことを、品って言っても良い気がします。谷中さんはスカパラの個性を一言で表すとどんなことだと思いますか?
谷中:一言というのは難しいけれど、みんなで盛り上がりたいっていうことかな。ライブへの思いと根本的には変わらないかもしれません。お客さんが1人でも楽しくなさそうだと気になるように、メンバー同士でもみんながお互い盛り上げあったりして、そう思っているような所はありますね。それは結成当初から変わっていないし、僕自身もそうやっているのが好きです。

--スカパラはメンバー個々が、寄りかかっていないけど仲が良さそうな印象を受けます。それはみなさんがいつも“どうやったらみんなが楽しめるのか”を気にかけているからかも知れませんね。これが休むことないロングライフバンド成功の秘密でもあるかも。


ここ数年は毎年ニューアルバムを発表し、海外でも意欲的にライブ活動を行っている東京スカパラダイスオーケストラ。ニューアルバム『PARADISE BLUE』はスカパラにとって20年のキャリアを積んで再び立ち返った原点であり、また一方で新たなステージへの幕開けとも言える存在でした。
谷中さんにはスカパラでの活動だけでなく、詩人や俳優としての肩書きもあります。次回は多方面に活躍する谷中さんの音楽以外の話も。


取材場所:「BUZZ OFF」

text by: TANAKA Toshie


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