今夜のお客様は、ヴォーカリストの鈴木雅之さんです。80年代に“黒塗り”のヴォーカルグループ・シャネルズで鮮烈なデビューの後、ラッツ&スターとして、またソロでも数え切れない大ヒットをお持ちの鈴木さん。日本を代表するヴォーカリストのひとりとして、そのご活躍は誰もが知るところでしょう。ご自身のベストアルバムにはマティーニの名を冠し、先日も「Martini Duet」というデュエットアルバムをリリースされたばかり。まずは、そのニューアルバムのお話からお伺いしました。

--『Martini Duet』拝聴させていただきました。デュエット曲を集めたベスト盤であり集大成、デュエットだけを集めたアルバムというのは、長年暖めていた企画だったとお伺いしましたが。
鈴木:もう20年以上…それこそソロでデビューした頃から、自分が音楽をやっていく上で、どうしても出しておきたいものだったんだよね。いろんなアーティストとコラボレーションしながら、いつもこのアルバムのことが頭にあった。ここに向かってずっとやってきた、みたいなところもあって。
--満を持して、というわけですね。でもそれを伺って納得です、それというのも聴いてまず驚かされたのは、一枚のアルバムとしての完成度だったんです。リリース時期だけじゃなく、ジャンルもアレンジもバリエーションに富んでいるベスト盤なのに、今このときのために全部用意したようなトータル感があるんですよね。ヴォーカリストとしてももちろんなんですが、今回は“プロデューサー・鈴木雅之”の才気に、改めて感じ入りました。
鈴木:ああ、嬉しいね。自分で言うのも何だけど、自分自身をプロデュースすることには誰よりも長けてるって自信があるんだよ(笑)。この声に何を歌わせたいか、歌うとしたら相手にはどんな声が似合うか…。もちろんそれは、その時々で変わってくるわけで、その時点での「鈴木雅之」にぴったりな曲、アレンジ、歌い方ってのがある。そういうこと考えるのが楽しいんだよね、もう趣味が自分って言うくらい、ヒマさえあれば考えてる。「趣味:鈴木雅之」(笑)。
--「Endless Love」とか、この究極のラブバラードともいうべき曲を鈴木さんが歌うなら、お相手にはやっぱりダイアナ・ロスやマライア・キャリー級のビッグネームでないと、って普通なら考えると思うんです。それがMay.Jさんという、アルバム中もっともお若い、しかもHIP HOP系のシンガーを起用されていて。
鈴木:May.Jはこの録音の時、10代だったんだよね。10代の女の子とデュエットしたら、これは“キング・オブ・デュエット”って言っていいだろうと(笑)。で、こういう日頃はヒップホップやってる女の子に、オーソドックスの極みみたいなこの曲を歌わせたら、絶対面白いって思ったんだよね。
--アレンジひとつとっても、かれこれ多くの大物アーティスト達が重厚感たっぷりに歌ってきたイメージも残しつつ、でもこんなにフレッシュに、軽やかに響かせることができるんだなあと。
鈴木:うん。俺にとってラブソング、デュエットソングというのは、歌う相手との疑似恋愛なんだよね。恋愛にしても、若い時にしかできない恋愛があるなら50代にしかできない恋愛ってのもあるなって思っていて。50代の俺が、10代のMay.Jと恋をするならこうだ、俺だからMay.Jの新しい魅力を引き出せるってところを表現したいし、そうじゃなきゃ楽しくない。とにかく楽しみたい、その時一番に楽しいことをやるっていうのが大事なんだよ。
--“楽しさ”でいうと、ブラザー・コーンさんと木梨憲武さんとのコラボレーション曲「可愛いひとよ」も、溢れんばかりの楽しさでした!
鈴木:男女のデュエットが疑似恋愛なら、男同士のデュエットは純粋な“遊び”。「ホントに好きだねぇ、このひとたち!」って、とことん一緒にバカやれるようなね、そんな仲間たちと贅沢に、遊び心を追求するのが楽しいんだよね。そういえば、このアルバムのリリースパーティのときにね、一回だけのステージの為に、俺たち三人、わざわざコンポラスーツ作ったの(笑)。憲武が絵を描いてさ、紺と黒とグリーンのシャツもオーダーメイド。こんなんいいんじゃないかってマジになって相談して…そういう自分、結構好きなんだよね(笑)。

--「趣味:鈴木雅之」だから(笑)。でも鈴木さん自身がそうやって心底楽しんでやってらっしゃるから、聴いてるこちらも楽しいんですよね。
鈴木:そうでしょう、聴いていて思わず「踊りたい!」「楽しい!」ってワクワクしてくるような…「音を楽しむ」ってそれが音楽なんだからさ。この曲については、(オリジナルを歌った)クック・ニック&チャッキーのニック岡井さんが、昨年亡くなったことも大きかったね。
それこそ、ニックさんには、俺もコーンちゃんも憲武もみんな世話になって、キラキラしたソウル・ミュージックの楽しさ、わくわくをたくさんもらってきたから…。大体、この曲カラオケに入ってないんだよ!けしからんでしょう、そんなの!!
--ちょっとここのところ音楽から離れてしまっていたような人たちにも、「ああやっぱり音楽っていいな」「イマドキの音楽だって悪くないな」って、また音楽に触れるきっかけにもなる、そんなアルバムに仕上がっていると思います。
鈴木:うん、「恋愛」も「遊び」も結局“想像力”ってことだと思うんだ。「もう恋愛とか遊びとか言ってる歳じゃないな」なんて、もしかして諦めてしまっている人がいたら、俺の歌を聴いて、「こういうのもアリだな」って思って欲しい。ラブソングの数だけラブストーリーがあって、音楽の数だけ、楽しさがあって。アルバムってよく言ったもので、写真のアルバム見る時と同じなんだよ。見た途端に、身も心もその時の自分に戻っちゃうことってあるじゃない。自分の歌も、聴けばその瞬間、違う時間違う場所、時には別世界まで連れていってくれる、そういうものでありたいよね。
“キング・オブ・デュエット”として、また日本のソウル伝道師としての自信と誇りがひしひしと伝わってくるお話です。次回は、そんな鈴木さんの見渡す、今という時代、今の音楽についてのお話をお伺いします。