ミュージシャンのカヒミ・カリィさん、4回目のご来店です。最終回となる今回は、お酒についてのお話、そしてこれからのことなどをお伺いしました。
--お酒はお強いんでしょうか?
カヒミ:好きなんですけど、あんまり強いとは言えないですね。食事と一緒に、数杯いただく程度です。ハメを外すのは、一年に一度くらいだと思います(笑)。
--日頃はどんなものを?
カヒミ:食事と一緒というのが基本なので、日本酒が多いです。カクテルだったら、ブルドックやマティーニが好きですね。たぶん、体質とか相性的なものなんでしょうけど、私、ジンベースのカクテルだと、たくさん飲んでも頭が痛くならないんです。

--今回カヒミさんの為に用意させていただいたのは、ボンベイ・サファイヤをベースにした、シンガポールスリングです。いかがでしょうか?
カヒミ:名前だけは、という感じで今回初めていただきましたけど…すごく美味しいです。甘過ぎず、酸っぱすぎず。チェリーの風味がとても優しくて、飲みやすくていいですね。
--ご家庭でも気軽に作れるので、ぜひお試しください。カヒミさんは海外にお住まいになっていたこともあるし、今も演奏旅行などで度々海外へ行かれていますけど。行った先々で土地のお酒を飲む機会っていうのも多いのじゃないですか?
カヒミ:そうですね。お酒は、食事と同じくその土地柄をすごく反映してるものなので、その国ならではのお酒を飲むのは、その国を知る喜びでもありますね。
--そんな中で、特に印象に残っているお酒はありますか?
カヒミ:フランスで…ちょっと名前を忘れてしまったんだけれど、“毒入りのお酒”というのがありました。その地方にだけ伝わる、伝統的なお酒で…その場所でしか手に入らないものだそうです。
--毒が入ってるって、飲んでも大丈夫なんですか?
カヒミ:もちろん大丈夫ですよ(笑)。詳しいことはもう覚えてないんですが、昔ながらの製法で作っていた、今だとその成分のひとつが、薬事法で毒物とされているってことみたいです。とはいえ本当にわずかな量なので、その土地でだけは昔ながらの製法で作ることが許されていて。
--なるほど。「毒入り」って怖い反面、何故かロマンチックなものも想像してしまいますね。どういったお酒なんですか?
カヒミ:ウィスキーみたいな綺麗な褐色をしていて。アルコール度数が凄く高くて、香りだけで酔っぱらいそうになるくらい。私はほんと、舐める程度にしかいただかなかったので、味はもうよく覚えてないんですけど、個性の強いお酒でしたね。
--そういう珍しいお酒は、長く滞在したり、主要な観光地ではないところもゆっくり巡ったりしないとなかなか出会えないんですよね。
カヒミ:ええ、私はあまり詳しいわけではないんですが、私の周りはお酒好きが多くて、こだわりのある人たちばかりなので、いろいろ美味しいお酒を教えてくれるんです。だから私も、あまり飲まないわりには、舌のほうばっかり肥えてしまってるかもしれません(笑)。
--カヒミさんをお酒に誘う人はハードル高くて大変かもしれない(笑)。
カヒミ:でも、やっぱり私にとって、お酒っていうのは食事の一部なので、まずそのときの食事に似合うもの、というのが第一ですね。美味しい食事があって、美味しいお酒があって、気の置けない人たちと楽しいひとときを過ごせる、そういう場の雰囲気みたいなもののほうが重要かな。
--最後にお伺いしたいんですが。カヒミさんは、自分の音楽に対して、もちろん総合的に関わってらっしゃるとは思うんですが、ご自身では、やはりシンガー、歌い手としての自分というのがメインだとお考えなんでしょうか?
カヒミ:それは難しい問題ですね。いえ、その質問というのは、昔も今も本当によく聞かれることなので、自分でもそのたび考えてみてはいるんですけれど…。もちろん自分は歌を歌うし、歌手であることには間違いないんですが、自分の意識としては、音楽の一部としてしか考えられないんですね。歌は歌うけれども、もっと楽器に近い…。
--歌や声も、その音楽を構成する音のひとつ、という感覚でしょうか?
カヒミ:そうですね。たとえば、カラオケなんかがある場所にたまたま行った時に、「歌手なんだから、歌って」って言われることもあるんですね。でも、そう言われてもいつも困ってしまう。「歌」と「音楽」というふうに分けて考えたことがないし、「音楽」と「自分」というのも、あんまり分けて考えたことが無いんです。

--既に、音楽はご自身の一部と化しているんですね。
カヒミ:もう15年くらいやっていることですから、すでに人生の中に組み込まれている感じですね。私、デビューの時も、好きな音楽を友達と遊びみたいな感じで作っていて、ある日デビューすることが決まったという感じだったんですね。で、もちろん多少は自分の中での変化というものもあったかもしれないですが、基本的な意識としては、好きな音楽、自分の作りたい音楽を作ってきただけということには変わりなくて。
--仕事だけど仕事じゃない、というような。
カヒミ:ええ、仕事じゃなくても好きでやりたいと思うこと、というか。責任感ははっきりありますが、義務感はまったくないです。もしデビューする事がなかったとしても、私の音楽に対する気持ちの根底にあるものは変わらなかったと思います。
--いろんな方面で多彩に活躍されていても、やはり音楽と、それ以外のものでは全然取り組み方やご自身の意識は違うんですね。
カヒミ:映画など、音楽以外のお仕事もいろいろやらせていただいて、そういった機会を与えていただけるのは本当に嬉しくて、面白そう、やってみたいなと思えることなら挑戦してみたいなって思ってます。でも音楽は、そういう…「やる、やらない」っていうこと自体、一度も考えたことがないですね。
四回にわたってご来店いただいた、カヒミ・カリィさん。あくまでも自然体に、日々を楽しんでいらっしゃるカヒミさんならではの様々なお話、いかがでしたでしょうか。食もお酒も音楽も、人生を時に彩り、時に優しく癒してくれるもの。人にとって不可欠な、深い関わりを持っているものだということを、改めて感じたひとときでした。