盛況の中、終了した「ボンベイ・サファイア デザイナーグラス コンペティション2008」日本大会。審査員各氏を大いに悩ませ、白熱した議論を呼んだ今大会。

候補作品を改めて振り返りつつ、健闘の末、惜しくも選外となった候補者たちのコメントをここに紹介したい。ファイナリストに選ばれ、一年をかけての制作の間にあった、候補者たちの自らのデザインへの情熱、そしてグランプリが決定した今、思うこと。彼らの実感のこもった言葉が次回のコンペティションに参加を考えている人たちにも参考になれば幸いである。

◆大池史門さん 作品名:「TuTumu」
グランプリを獲りたかったので、もちろん今は悔しいです。ただ、今日この会場に来て、「作品の説得力」というものが物凄く必要なんだということを痛感しました。意図をいちいち説明できない、見た瞬間、直接的に相手に伝わっていくような強さを持ったデザインでなくちゃいけない。いろいろな過程を経て作り上げた自分のデザインを、いかに相手に結果として伝えていくか、そういった技術も習得していくことが今後の課題だと思っています。
今回は、自分のデザインを実際に制作できたということが、本当に大きな経験となりました。ガラス職人さんたちとのやりとりなどチームワークで物作りに取り組むといったこと自体が初めてだったので、醍醐味もあり楽しかったです。チームワーク、といえば、他の候補者のみんなと仲良くなれたのも嬉しかったですね。同じ目標に向かう仲間として、刺激にも励みにもなりました。この先もずっといい友人として関係が続くといいなと思っています。

◆庭本卓実さん 作品名:「amorous trace」
最優秀を獲得できなかったのは悔しいですが、「作品を作る喜び」は得られたので、こうした機会を与えてくれたボンベイ・サファイアと菅原硝子工芸さんに感謝しています。
相手に伝える表現であるには、はっきりとした主張がないといけないといった講評があって、確かに納得もするのですが、自分がずっと目指してきたデザインというのは、逆にはっきりしない…、曖昧なもの、ささやかで微妙な違いといったものだったので、その矛盾する二点を今後どうやって折り合いをつけていくのかが僕の課題だと思っています。また、自分は「手を加えて修飾していくこと」がデザインだとずっと思っていたのですが、敢えて手を加えずにおくというデザインの在り方もあるんだということを、審査員の方々のコメントやグランプリ作品を見て思い、深く考えさせられました。そういったことを含め、自分の強みはどこなのか、どこで勝負していくのかを、プロとして、デザイナーとして今後きちんと見極めていかないと、と思っています。

◆西村加奈さん 作品名:「KOTO」
グランプリを獲れなかったことももちろん残念ですが、もっと自分としてやれることがあったなと思う悔しさのほうが大きいです。完成作品を見たときに、これだという自信を持つことができなかったし、審査員の方々にも「少しデリケート過ぎでインパクトに欠けている。実際のひしゃくにはもっと強さがあるはず」といった講評をいただいて、自分が薄々感じていたことを的確に言い当てられてしまったという感じです。
製作期間の一年という月日は長いけれど、初めての体験だったこともありデザイン変更のタイミングなどがつかめず、心残りがあります。実際に制作にあたる職人さんとのコミュニケーションも、出来上がりを左右する重大なポイントでした。デザイナーとして、一緒に仕事をする人たち、そして作品を見る人とも、「いかに言葉では伝えきれないものを共有できるか」が、デザインの鍵なんだと、今改めて実感しています。

◆鈴木彩加さん 作品名:「Pierce」
出来上がった作品を見たときに、「何かが足りない」と即座に思いました。「マドラーとしては大きく質感が重い」「もっとグラスが揺れるような構造であれば遊び心が表現できたはず」といった講評も頷けることばかりで、結果的に出来上がった作品は、自分が表したいものになりきれていなかったと感じています。
いつも自分で試作してみては、ちょこちょこと直しつつ…といった過程を繰り返しながら最終的なデザインを固めていくというようなやり方だったので、「ガラスは自分で作れない」という点が後々まで苦しかったです。でも考えてみれば、プロであればそんなふうに試行錯誤に時間をかけたりはできないわけで、デザイナーたるもの、まず最初の段階ではっきりと具体性を持ったデザインを打ち出せなければ駄目なんだということを思い知りました。このことを教訓とやりがいにして、今後に活かし頑張っていきたいと思います。