平茶わん
ちょっと浅くて広い形が、何よりも印象的なめし茶わんである。磁器の清楚な瑞々しさ。古代メソポタミア由来の彩釉を取り入れたという素敵な模様が、器の内側にもあしらわれている。煮物やデザートにも似合うのだろうが、やはりご飯を食べてみたい。暖房設備が整ってご飯が冷める心配がない現代、茶わんはもっと浅くてもいいのではないかという考えが、この新しい茶わんを作った。発表は1989年。持ちやすさと食べやすさは、今でも充分に新鮮だ。絵柄は200種類以上もあるので、選ぶ楽しさも尽きない。
波佐見焼の開窯は慶長4年(1599年)というから、もう400年以上の歴史がある。有田とは山ひとつ隔てた隣町であり、江戸期より日本有数の磁器産地として知られた。この波佐見焼にモダニズムの風を吹き込んだのが1779年創業の白山陶器であり、デザイナーの森正洋さんである。佐賀県塩田町に生まれた森正洋さんは、多摩美術大学の工芸図案科でデザインを学んだ後、1956年に白山陶器に入社。社内デザイナーとして約20年間を過ごし、退社後も2005年に没するまで顧問デザイナーを務めた。
森イズムを今もしっかりと受け継ぐ白山陶器は、グッドデザイン賞やロングライフデザイン賞の常連である。基本姿勢は、何よりも使いやすく生活の中になじむということ。新しさはあるが流行に左右されず、飽きのこないデザインであること。華美でも平凡でもなく、使う人の愛着に応える器であること。口で言うのは簡単だが、これを常に実現するのがいかに難しいことか。
茶わんのように毎日使うスタンダードにも、いつか変革の時は来る。そして美しく変わったものだけが、次のスタンダードになる。この平茶わんたちは、そんなことを教えてくれる。
平茶わん
デザイン:森 正洋
製造:白山陶器
サイズ:Φ15×高さ5.3cm
価格:2,625円(税込)
素材:磁器
販売店:白山陶器東京ショールーム
東京都港区南青山5-3-10フロムファーストGフロア
TEL.03-5774-8850/FAX.03-5774-8851