ボンベイ・サファイア デザイナーグラス コンペティションでは、デザイナーの卵から生み出される自由な発想と斬新なアイデアによるグラスデザインが私達に驚きと感動を与えてきた。そんな彼らの作品をジャッジしてきたのは、第1回より審査員として参加している佐藤卓さんと吉岡徳仁さんのお二人。審査するだけでなく、時には学生たちと一緒にガラス工房へ赴きアドバイスをするなど、真摯な姿勢で学生たちの作品と接している。そんな二人はいったいどのような発想でデザインするのか?
今回は、トップデザイナーの二人が作り出したグラスと、さらには世界でも名を馳せる海外のクリエイターが生み出したグラスを紹介したい。

▼佐藤卓
コンセプトは『時』。
柄の部分がブルーの砂を閉じ込めた砂時計になっている。
「マティーニを飲む素敵な時間。そのときに五感を通して感じる、とても計り知れない感覚。そんな時間と感覚を意識した。」(佐藤)
飲むという行為に時間の感覚を持ち込むという新たな発想の作品である。

▼吉岡徳仁
テーマは「グラスが宙に浮く」。
柄の部分が、オリーブに刺すピックのデザインになっている。
この柄がグラスを支えていることによって、「宙に浮いている」ように錯覚するという独特なデザイン。
そして、海外のデザイナーの中から紹介するのは、トム・ディクソンとカリム・ラシッドという二人。二人ともボンベイ・サファイアの広告やイベントで協力しているだけでなく、ボンベイ・サファイア財団の会員でもあり、さまざまなかたちでデザインやアートに力を注いでいる。
トム・ディクソンは、1959年チュニジア生まれ。独学でデザインを学び、80年代カッペリーニ社とのコラボレーションにより今やアイコン的なデザインの一つであるSチェアを発表、その名を世界的なものにした。2001年以降、英国のインテリアショップ Habitat UK のクリエイティブ・ディレクター、2004年からはフィンランドの家具メーカー Artekのクリエイティブ・ディレクターも務める。

▼ トム・ディクソン
「Perfect Balanced」
ダークブルーで円錐形を上下に重ね合わせたようなグラス。テーブル、椅子、ライトというバーを構成するパーツが全くおなじ形状で統一されている。バーまでもグラスデザインに含ませたインスタレーション的作品。
もうひとりのカリム・ラシッドは、1960年にエジプト・カイロで生まれ、カナダで育った英国とエジプトのハーフ。大学で産業デザインを学んだ後、イタリアに渡りエットーレ・ソットサスなどの元で修行、カナダに戻り活動開始、NYで自身の事務所を開いたのは1993年。世界各国の著名企業をクライアントに抱え、受賞や美術館の永久所蔵多数。アートや音楽などの分野でも活躍している。
▼カリム・ラシッド
「FINE FORM」
機能性を追求した末に行き着いた「完成された」デザイン。
脚(ステム)はグラスを支えるだけでなくオリーブを刺し、さらにステムにスカートをかぶせることで4杯、5杯飲んだあとでも簡単にグラスをもつことができる。まさに、FINE FORMなマティーニグラス。
今回紹介した4人は、人気・実力ともトップクラスのデザイナーたちである。彼らがこのような独創性溢れる作品群を生み出せるのも、そのクリエイティブセンスと現実との葛藤がもっとも大きい学生時代があったから。現在、開催中のボンベイ・サファイア デザイナーグラス コンペティション 2008でも、まさにその葛藤と学生たちは戦っている。この試練の時期を乗り越えて、デザイナーへの道を歩みだせるものをどれだけいるのだろうか? 彼らの将来への期待を抱きながら、その様を見守るのもまた一興かもしれない。