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ガラスという素材の難しさとその可能性
Designer Glass Competition制作ミーティング

February 12, 2008

これまでも経緯をレポートしている、デザイナーグラス コンペティション2008。刻一刻と迫る日本大会最終選考に向けて、候補の5作品がいよいよ実際の制作段階に入る。年明け1月下旬、ファイナリスト達は千葉県九十九里海岸にほど近い、菅原工芸硝子の工房へと足を運び、第二回制作ミーティングが行われた。

第一回ミーティングは平面の図面を元にした打ち合わせであったが、今回はそのミーティングを受けて制作されたサンプル作品を元に、制作を担当するガラス職人と、よりリアルにイメージを共有していくというのが目的である。

まずは、初段階の試作品が各ファイナリスト達の目の前に置かれ、それを元に話し合う場が持たれた。あくまでも大まかな形状を模しただけのサンプルだが、手にすると確かな重みを持つ「立体」の登場に、一同目を輝かせる。

しかし、今まで頭の中にしかなかったものが現実に現れる感動に興奮すると同時に、図面の時点ではわからなかった様々な問題点なども浮き彫りとなったのも事実だ。それでも妥協することなく理想通りの作品を生み出したいという情熱が、議論を白熱させていった。

Designer Glass Competition制作ミーティング


その後、工房に行き、さらなる試作品の製作にとりかかる。各自自分のイメージを職人に直接伝え、職人がその場で作ってみせる。互いに納得のいくまで繰り返される作業に、次第にファイナリスト達の面持ちも一学生からプロフェッショナルの顔へと変貌していった。

興奮と緊張の数時間を終えた彼らの心境を、率直に語ってもらった。

京都工芸繊維大学院デザイン科学専攻 1年 西村加奈さん

京都工芸繊維大学院デザイン科学専攻 1年 西村加奈さん

既に用意してあったサンプルを見せていただいたとき、想像していたより若干大きく、自分の求めたい繊細さが失われていたように思ったんですが、実際に工房で、職人さんと意見交換をする段階で、こちらの希望やアイデアも随分取り入れてもらえて、この先の制作に大きな手応えを感じることができました。ガラスはもっと制約の多い難しい素材と思っていたのですが、考えていた以上に自由度が高いなと、逆に思ったくらいです。
また、私がその場で言ったことをすぐに理解し、目の前で実現してくださる職人さんの技術力の高さにも改めて驚かされました。
最終的にどれだけ自分の理想に近い作品にできるか、本当に楽しみです。

工学院大学 建築学専攻 修士2年 庭本卓実さん

工学院大学 建築学専攻 修士2年 庭本卓実さん

紙の図面やCGでしか見ていなかったものが、未完成であれ「実物」として手の中にあるという、そのことの凄さにしみじみ感じ入っています。
職人さんに自分のイメージを伝える作業は難しいなとも思いましたが、それでも作る側の観点からいろいろとアイデアも出してもらえて、完成に向けて安心できた部分のほうが大きかったですね。
ガラスには何ができて、どういったことが難しいのか、そういったガラスの特性を、自分の作品だけでなく他の候補者の人たちの作品を通して知ることができたのも今回勉強になりました。
「使っていて楽しいものが作りたい」というのが僕のデザインの基本なので、使用に耐えうるグラスであることとデザインとのせめぎ合いには、まだ悩まされそうですが、最後まで頑張りたいと思います。

京都工芸繊維大学院デザイン科学専攻 1年 西村加奈さん工学院大学 建築学専攻 修士2年 庭本卓実さん

愛知教育大学 造形文化コース 3年 望月未来さん

愛知教育大学 造形文化コース 3年 望月未来さん

ガラスで酒の升を表現したいというのが僕の作品コンセプトですが、自分自身でも「これがガラスで作れるのかなあ?」と半信半疑のところが実はありました。
実際、角の組み木のようなつなぎ目を表現するのにガラスではいろいろと難しいところがあるということでした。
でも、菅原硝子さんには製法の方法をいくつも提示していただけたし、実現の可能性は感じています。学校の授業で陶芸をやったことがあって、それと近いものを想像していたのですが、時間をかけて形を作っていく陶芸とは違い、ガラスはもっと「一瞬をとらえる」ものなんだなということも、今回改めて思いました。ガラス作品は、高い技術がなければ実現できないものでもあるので、学生のうちにこんな機会に恵まれるチャンスは、そうはない希有の体験だと思っています。

京都市立芸術大学 プロダクトデザイン専攻 3年 鈴木彩加さん

京都市立芸術大学 プロダクトデザイン専攻 3年 鈴木彩加さん

サンプルが出来上がって、そのグラスの重量感にまず感動しました。
容量を量るために、私のサンプルには実際水を入れたりもしたのですが、水が入るとまた表情が違って見えて、嬉しくなりましたね。
私のデザイン通りに作ると強度の面で若干問題があると言われたのですが、この形にはこだわりたいと、職人さんにも無理を承知でお願いしています。
ガラスには工業製品としてのイメージが強かったのですが、今回こちらに伺って、もっとアートに近い、職人の世界なんだなと考えが変わりました。ガラスの持つ美しさ、表現力の懐の広さに、すっかり魅了されたし、他の人たちの作品などを見て、自分の中にも新しいイメージがどんどん広がっています。

愛知淑徳大学大学院 現代社会専攻 2年 大池史門さん

愛知淑徳大学大学院 現代社会専攻 2年 大池史門さん

最初のサンプルは、自分の図面とは違いそれぞれの部分で分割されていたので、説明はうけたもののイメージが沸きにくかったんですが、その後工房での制作段階では、一体化した状態のものにもトライしてもらい、自分としても具現化に向けてしっかりとした確信を持つことができました。
また、今回のグラスは直線的なフォルムのなかにわずかに揺らいだ感じを出して、「ほろ酔い気分」を表現したいと考えているんですが、サンプルでは自分が想像していた以上に素晴らしく表現されていて感激しました。
ひとつ問題がクリアになると、また新たに問題が出てくるといった感じで、まだまだ不安は無いとはいえないですが、この試行錯誤が最後には必ず納得のいく完成品となることを信じています。



愛知教育大学 造形文化コース 3年 望月未来さん京都市立芸術大学 プロダクトデザイン専攻 3年 鈴木彩加さん愛知淑徳大学大学院 現代社会専攻 2年 大池史門さん

果たしてどの作品が、もっとも美しくマティーニを湛えるグラスとなるのか。またそのデザインは世界の舞台でどれだけの衝撃を与えられるのか。美しく繊細、しかしどこか気まぐれで決して思い通りにはならないガラスを相手にとまどいつつも、果敢に闘いを挑む若きデザイナー達。彼らの健闘ぶりを、我々も引き続き追いかけていきたい。

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