第7話
ジンの定義、その長い歴史について。
世界4大スピリッツといえば、ジン、ウオツカ、ラム、テキーラのことである。このうちラムはサトウキビ、テキーラは竜舌蘭と原材料が決まっているので定義は明らかだ。残る2つ、ジンとウオツカはどうだろう。
2007年12月17日、ブリュッセルのEU農相理事会で、ここ5年にわたって繰り広げられていた「ウオツカ戦争」が決着した。これは、穀物もしくはジャガイモを原料とするスピリッツこそが本当のウオツカであると主張するポーランド、スウェーデン、フィンランドに対し、英国、アイルランド、オランダが、サトウキビやブドウから製造されたものもウオツカであると対立していたもの。
今回の決議により、これからはラベルに原料名を明記さえすればウオツカと呼んでもいいという「新基準」に落ち着いた。
ジンは、大麦、ライ麦、ジャガイモなどを原料とした蒸留酒という点ではウオツカに同じだが、ジュニパーベリー(ねずの実)によって香り付けされてあるのが大きな特徴である。17世紀にオランダで生まれた薬用酒ジェネヴァ(解熱や利尿効果がある)を起源とし、17世紀末に英国王となったオランダ人のウィリアム3世が英国へ持ち込むと、短くジンと呼ばれるようになった。
その後、19世紀半ばに連続式蒸留器が発明され、雑味が少なくアルコール度数の高いドライ・ジン(ロンドン・ジン)が誕生する。通常のジンはスピリッツにジュニパーベリー等を直接加えて単式蒸留するが、そこにさらなる改良を加えたジンがボンベイ・サファイアだ。

ジュニパーベリーの他に9つの香料と植物を使用し、その繊細なフレーバーをスピリッツの蒸気に通過させるというユニークな香り付けの方法をとっている。このヴェーパー・インフュージョン製法こそが、プレミアム・ジンと呼ぶに相応しい味と品質を生み出しているのである。
オランダでは今でもジェネヴァが常温のストレートでよく飲まれる。ロンドン・ジンよりも香りが地味な分、味がふくよかで力強い「男の酒」だ。香りの洗練を極めたボンベイ・サファイアと飲み比べ、350年ほどあるジンの歴史を体験してみるのもバーの楽しみであろう。